那賀町に生まれ、住み続け・・・ある日の「釣り」で「流木」に出逢われました。思いつきで「風蘭」を植えたところベストマッチ。その後、「釣りバカ」だった人生が一変。集めた流木は1,000以上。次々と沸いてくるアイデアから斬新な「アート作品」を作り続ける吉谷さんに、お話をお聞きしました。(取材年月 2021年8月)

吉谷 正(よしたに ただし)

1950年、那賀町平野(旧相生町)生まれ、現・鷲敷町仁宇在住。平野小学校、旧相生中学校、那賀高校卒。1968年、延野郵便局勤務。その後、牟岐、鷲敷、木沢、桜谷局等に勤務。再び、鷲敷局に戻り、2016年、退職。同年から現在まで、暦松園造園にて修行。2018年より「流木アート」制作開始。2019年に町文化祭、2020年に阿南市「光のまちステーションプラザ」、2021年に徳島市「ギャラリーM&M」にて作品展示。趣味は、海川での釣り。磯釣りでは、徳島県釣連盟105代名人位。ダイワグレマスターズ全国大会出場3回(2015年大会では、全国3位入賞)野球歴も長い。

  

――吉谷さんと「流木アート」との出逢いを教えてください。

私が流木に出逢ったのは、25年ぐらい前、「アメゴ釣り」に行った時です。釣りをしながら渓流を登っていると、牛角に似た穴の空いた木を見つけました。持ち帰り洗って、「風蘭」を植えてみると、素晴らしくマッチしたのです。

――すごい数の風蘭ですよね!

そこからは、釣りの割合が3割程度になり、ひたすら川岸や砂地に目が向くようになりました。珍物を見つけると、ガッツポーズでリュックサックに入れたものです。

その後、十数年かけて1,000個ぐらい流木を集め、600個ほどに、風蘭・セッコク・ムギラン・カヤラン等を植え、蘭棚や蘭ハウスを作って楽しんでいます。

これらの流木は、モミ、カヤ、ツガ、アカマツ等ですが、水流で削られて芯が残り、水に沈むほど重たいものです。元は、大木の中に埋もれていた部分で、歯茎に埋まっている歯のようなものです。

――へえ!長い時間をかけて、旅をしてきた木なのですね。ロマンがありますね。これらも、「流木アート」と言うのでしょうか?

いえ、違います。「流木アート」は、この前、来てくださった展示会の作品のようなものです。

私が「流木アート」に興味を持ったのは、木沢奥遣戸で見つけた、高知県の鳥「ヤイロチョウ」に似た、緑色の木片を拾ったのがキッカケでした。

帰ってすぐに「流木アート」についてパソコンで検索し、本屋でも資料を探してみたのですが、あまり情報がなく、見様見真似で取り組み始めました。

――「流木アート」を作りたいと思われたのは、直感だったのですね!流木はどうやって集めたのでしょう?

まず、流木を拾い集めるために、木頭・木沢方面に向かい、川を歩いてみたのですが、なかなか良い木がありませんでした。

沢山あったのは、長安口ダムや那賀川河口砂州です。インスピレーションをかき立てられる、いい流木が豊富で助かりました。台風などの大雨の後にいい木が拾えます。

――集めた流木をどうやって加工なさったのでしょう?

水洗いをし、それから天日干しして乾燥します。拾ってきたそのままでは使えません。これは、海部川で三日前に拾ってきた流木です。これから洗って綺麗にします。

当時、拾ってきた流木で、いざ制作しようとしたのですが、道具がありませんでした。ノコギリとナタ、ボンドが中心で、簡単なものからスタートしました。その後、ドライバー、インパクトドリル、卓上ボール盤、回転ノコギリ、グルーガン等、いろいろ買い揃えていきました。

――独創的な作品が多いですが、どう企画なさってるのでしょう?

夜中にアイデアを思いついた時は、デッサン帳に書き留めておきます。二日に1個程度のペースで制作し、25~30個制作したら、また流木を拾いに出かけます。

いい流木を見つけた時に、イメージが沸く場合もあります。

ちなみに、この「石林」は、テレビを観ていた時に思いつきました。本当は、もっと大きな作品にしたいのですけどね。

――中国の「石林」ですよね!この流木にぴったりですね。ちなみに、この青色はなんでしょう?藍染めですか?

いえ。これは、木に生えたキノコの色なんです。「緑青腐菌(ろくしょうぐされきん)」と言います。本物は、写真よりももっと美しい色です。このキノコが木に生えると、宿主の木を紺碧に変色させるのです。とても綺麗な色なのに、「ぐされ菌」とは可哀想な名前ですよね(笑)。

こういう風に台を先に作って、流木を貼り付けながらデザインを考えていく場合もあります。木はボンドでとめています。

貼り物は、慣れたら簡単なのですが、作りたいものに合う流木を確保するのは大変です。例えば、向日葵の花びらに使った平らな流木を、この枚数確保するのは難しいのです。

――見事な向日葵ですね。個人的には、パイナップルも気になります。中はどうなってるのでしょう?

中は、空洞になっています。流木の断面を利用しました。もとは、花瓶にするつもりだったのですが、作っているうちに「パイナップル」になったのです(笑)。球状にするのが難しかったですね。

隣のバナナもいいでしょう?これは、ほとんど流木の形そのままです。「ヘタ」だけ細工しました。木を拾うと、発想が沸いてくるのです。まっすぐな流木もあれば、歪んだ木もあり。自然は珍しいものの宝庫です。

――本当に、アイデアが素敵です。これまで美術を勉強したり、他の分野のアート作品を作ったりしたことはなかったのですか?

ないです。釣りが趣味でしたから(笑)。釣りの前はずっと野球をしてて、創作活動というほどのことは・・・。

そういえば、郵便局に勤めていた時、古切手が手に入りやすかったので、古切手を畳一畳ほどに貼って、「那賀川」を作ったことはありました。「ちぎり絵」「貼り絵」とでもいいますか。山下清のような作品です。

――やっぱり、才能ですね!

いやいや、そんなものじゃあないです。ただ、3年前に、町の文化祭に展示させていただいた時、興味深いご意見を沢山いただき、「より美しい作品を作りたい」と、気合いが入るようになりました。昨年からはグレードアップして、新しい作品にも挑戦しています。

――これから、「流木アート」でどんなことをやっていきたいですか?

仲間を集めて、展示会をするのが夢です。いろいろなジャンルの作品、例えば、女性であれば、ペンダントなど流木アクセサリー制作の方が集まって、サークルのような活動をしたいです。個性的な作品が増えれば嬉しいです。

各自の作品をインターネットで販売したり、流木を加工材料として販売したりして、「流木アート」の輪を広げたいです。上勝町の「いろどり」のように、那賀奥のお年寄りの方から流木を仕入れたりして、販売網を広げられたらいいですね。

――ずっと那賀町にお住まいになって、どう感じられますか?

那賀町は、自然の美しい町だと思います。特に、木沢は本当に素晴らしい。木沢局に勤務していた時に思いました。

写真展に出すような滝が沢山あって、2年間木沢に勤務しましたが、全く飽きませんでした。大きな石も素晴らしいです。木沢の石は万博にも出したそうです。

反面、自然に興味を持つと、空き缶とかゴミが気になりました。大きなゴミ袋を持ってゴミ拾いしたこともあります。

――吉谷さんは、どういう方に那賀町に移住して欲しいですか?

何かをやってみたいという意欲のある方や、芸術家の方に、那賀町に来ていただきたいです。そして、町には、もっと芸術家を評価して欲しいです。那賀町に、こんな文化教室があると、PRにも積極的に協力して欲しいですね。

また、ここは癒しを得られる場所なので、都会での生活にちょっと疲れた方や、仕事を引退なさった方、子供たちが自然に触れるのもいいと思います。

――吉谷さんの人生において、大事なことはなんでしょう?

そうですね。「前進あるのみ」でしょうか。毎日、必死に生きています。今は、タコ釣りに夢中です(笑)。

私の好きなヘミングウェイの言葉に「釣れない時に“しんどい”と考えるのは普通の人だ。釣れない時は、神様が与えてくれた“考える時間”だと思え」というのがあります。

立ち止まるのは嫌いですが、作業場でぼーっと考える時間は好きです。こういう時は、アイデアも沸いてきます。

――私も同じです(笑)。

根っからのB型人間で、感性で動いています。四人兄弟の長男ですが、負けず嫌いでしたね。

釣りも、ただ釣るのではなく、大会がメインです。どうせなら勝ちたいと思っています。

――最後に、読者の方へメッセージを一言お願いします。

「流木アート」仲間が欲しいです。私の知識経験は、何でもご提供します。自然を活かした創作活動は楽しいです!ぜひ一緒にやりませんか?

―本日は、暑いところ、お時間いただきありがとうございました!

熱い(ハートが)人が来たから、暑くなったかな。あはは!

<ご興味がある方はいつでもご連絡ください>

吉谷さん携帯電話 090-7145-9094

作品の一部をご紹介します。

那賀川に住み着いたアザラシの「ナカちゃん」。天然の「綿花」を下に敷いています。
ただ縦横に組んだだけでも・・・。
カフェのインテリアです。
赤いポストが可愛い。
ドングリをとりたいのかな?
お部屋の照明にどうぞ!

自然の造形「流木」に魅せられて。◆吉谷正(流木アート作家)

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